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釣りを続けているうちに日が暮れ始め、僕たちは庵に帰ることにした。
今日の釣果はなかなかのものだった。二十センチぐらいの大物が二匹と十センチぐらいのが五匹。干物にしたりで忙しくなりそうだけど、釣りは嫌いじゃないからそれもまた一興だと思う。
「今日は大量だったなあ」
おじさんが豪快に笑う。
だが和やかな空気はウーッというサイレンの音にかき消される。
空襲警報だ。
最近になって、町では毎日のように空襲警報が鳴るようなった。幸い、山の中は攻撃がないから、おじさんと僕はいつも隠れもせずに呑気に歩いている。
木が僕たちを隠してくれるからだ。
「最近、多いな。警報が。空襲がそれだけ多いんだな」
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