空襲

2/13
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
釣りを続けているうちに日が暮れ始め、僕たちは庵に帰ることにした。 今日の釣果はなかなかのものだった。二十センチぐらいの大物が二匹と十センチぐらいのが五匹。干物にしたりで忙しくなりそうだけど、釣りは嫌いじゃないからそれもまた一興だと思う。 「今日は大量だったなあ」 おじさんが豪快に笑う。 だが和やかな空気はウーッというサイレンの音にかき消される。 空襲警報だ。 最近になって、町では毎日のように空襲警報が鳴るようなった。幸い、山の中は攻撃がないから、おじさんと僕はいつも隠れもせずに呑気に歩いている。 木が僕たちを隠してくれるからだ。 「最近、多いな。警報が。空襲がそれだけ多いんだな」
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!