8人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はおじさんが手に持っている新聞に目をやりながら言う。
「なんて書かれているの」
昭和十九年九月二日と書かれた新聞を見ながら、彼は声高々と内容を読み上げた。
「いつもと同じだ。日本優勢。日本戦闘機が敵爆撃機、及び戦闘機を粉砕。勝利は目前。だとよ」
「……今日って何日だった?」
おじさんはぼさぼさの黒髪をがしがしと掻きながら、わざとらしく茶化すように言った。
「お前の歳で日にちがわからなくなるっていうのはまずいと思うぞ。お前、自分の名前分かるか? 俺が誰だか分かるか?」
「今日は九月九日だろ。いつの新聞だよ、それ」
「良かった。まだ痴呆になったわけじゃないみたいだな。安心した。お前のことは息子だと思っているが下の世話はしたくないからな」
おじさんの言葉にムッとしながらも、新聞の日付に目をやる。視線に気が付いたのか彼は新聞を見やると軽い口調で言った。
最初のコメントを投稿しよう!