手紙

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「新聞が遅れているだけだろ。珍しくもない。国内がこんな状態で配給制まで始まったんだ。それなのに日本が勝てると思うか。誰も事実がを見えないし、見ようとしないからなぁ」 おじさんは町の人たちに「非国民」だと呼ばれる。軍需工場にも行かないし、働かない。自給自足で生活が出来るため配給になんか頼らなくても生きていける。おじさんは昔、研究者でたくさん稼ぎ、家も裕福だったらしい。 だから、闇市で食物を買えば何もしなくても生きていける。 おじさんは頭のいい人だ。魚の取り方から罠の作り方、兵器の作り方まで何でも知っている。こないだはアメリカの戦闘機の設計図の図解まで一人で暇潰しと言い作り上げた。 「そういや、恋文のお返事は来たか」 思い出したかのようにおじさんは言った。
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