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「もしよろしければ、これから那覇の方へ行って飲みませんか?」
仲宗根さんに誘われ、彼の部下の運転する車で那覇市内へ向かった。
「女の子の居るようなお店と、普通の居酒屋…どちらがお好みですか?」
「そうですね…普段、東京ではキャバクラのようなところはまったく行かないので…ちょっとハメを外してみたい気もします」
「そうこなくちゃ!」
車は、那覇市内のネオン街へ向かった。
那覇市内の松山という歓楽街に車が停まると、そこら中を徘徊している黒服のキャッチが一斉に取り囲んできた。
「2時間飲み放題で1万円!」
「いい子つけますよ!ドンだけ飲んでも8,000円ですよ!」
「9,000円で本番!総額9,000円!本番、本番!」
囲まれて困惑しているところへ、
「ごめんなさい、もうお店決まってるから」
さわやかな笑顔でキャッチをかわし、暗い裏路地に向けて仲宗根さんが歩き始める。俺は後に続いた。
「東京では、ちょっと体験できないような面白いお店をご紹介します」
歩きながら、悪戯っ子のような笑顔で仲宗根さんが親指を立ててみせる。
俺は、もともと酒はあまり飲まずキャバクラやスナックのようなところへは、人の付き合いで数えるくらい行っただけだった。金を払って女性にチヤホヤされることの空虚さが嫌だったのかもしれない。
「到着です」
廃墟のようなビルや家屋が建ち並ぶ薄暗い路地裏の一角に、品のない紫色の立て看板が毒々しい光を放っていた。
『Sphere』
朽ちかけた安物の合板の扉の奥から、女たちの嬌声が漏れ聞こえていた。
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