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「そう、……やっぱりそうよね」
始めから予想していた結果のように、あまり残念に思う事も無い君はそう言い。
「君にはガッカリしたとか期待外れとは言わない、そもそも無茶な約束を取り付けたのは私の方だから、果たせなくても気に病む事はないよ。
一年間、長い間なのか短い間なのかは分からないけれど、こんな変な約束に付き合ってくれてありがとう。足利君は足利君の日常に戻ってね」
それを別れの言葉に、君は校門と俺に背を向けてどこかへ行こうとするが。
「待てよ、霧桐。俺の話はまだ終わってはいないんだよ」
制止の声に君は止まる。こちらに振り返った時、瞳に溜まっていた水滴が飛んだような気がした。
また瞳を拭った後、感情を殺し切った瞳を向けてこちらに言う。
「話が終わっていないとはどう言う要件なの? 約束も終えたし、足利君と話す事も無いとは思うけれど。
まさか、思い出話に花を添えようとか馬鹿な事は言わないわよね」
「そんな事考えてはないよ。ただその約束についてなんだが、もう一回確認したい事があってな」
「確認したい事、何について?」
今更何よと言わんばかりに、君は腕を組みながら不機嫌そうに聞いてくるが。
俺にとってはとても大事な事で、クタクタになるまで体を動かしたんだ今聞かなければならない。
「果たさなければならない約束は世界の滅亡の回避の手段、期限は校庭の記念樹である桜が芽吹く時まで。これで間違いはないんだよな?」
「間違い無いわ。約束を果たそうが果たすまいが抑止力である私は世界に帰る、明日桜が芽吹いてしまうから今日が終われば私は帰るの。
そんな既知な事を確認して、だからどうしたの?」
決まり事を改めて確認した。それが絶対なのだと言わんばかりに、帰ってしまう事を含めて間違い無いと君は言った。
ならば――――そうであるならば。
「じゃあもう1つだけ確認するが。明日芽吹くハズの桜の枝がそれこそ1本残らず切られてしまった場合、約束の期限ってのは明日になるのか?」
「え…………」
予期していなかった俺の言葉に、君の思考が停止したようで固まって。
頭が言葉を理解したのか。閉められた校門をスカート姿で飛び越して、校庭の方へ全力で駆けていく。
俺はその君の後を、ゆっくりしながら追い掛ければ。最初の待ち合わせであった桜の下にいる君は。
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