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〔変な夢〕
ある夜の事。英幸が眠りに就くと…
『おぉ~ぃ、英幸やぁ…』
その声はまるで、彼が眠りに就くのを待っていたかの如く、どこからともなく聞こえて来た。
【う…ううん…?】
英幸はその声に目を覚ますと、そこは明らかに自分の部屋ではなく。
辺り一面が、今まで見た事も無いような大自然に囲まれた、田畑の中の一画。
しかもその畑の真ん中に、一人佇んでいた。
【ヤッベェッ…ど、何処だよ、ここは…?】
英幸は朧気ながらも、その場から起き上がり眠気眼で辺りを見渡す。
すると再び…
『こっちじゃ~っ、英幸ぃ~!』
今度はハッキリと、自分の名前を呼んでいるのが分かる。
【だ、誰よ…?】
声がする方を振り返ると、そこには古めかしい着物姿の見知らぬ老人が1人立っていた。
【ん?知らねぇじじいだな…】
その老人は、右手に柄杓を持ち、左の肩には何やら桶のような物を担ぎ、英幸に近づいて来る。
『やっと気付きよったかっ!全く鈍い奴じゃ。これで目を覚ませっ、ホレッ!!』
老人は言うが早いか、柄杓で桶の中身をひと掬いすると、いきなり英幸に向かって投げつけた。
《ビシャアッ!!!》
【うわわっ!!何だこれっ~?ギャッ、マジ臭っせぇ】
『かっかっ♪それかぁ?それは畑の肥えじゃ、ワシのウ○コじゃよっ♪』
【ウ、ウ○コだって~っ!?きったねぇっ!!じ、じじぃっ、何の恨みがあってこんなっ!!】
『黙らっしゃーいっ!じじいとは何じゃいっ、失敬なっ!!ワシを誰だと思っちょるか~っ』
【そんなの知るかっ!!時代劇みたいな格好しやがってっ!
まさか水戸黄門とでも言う気かよっ】
『黄門じゃとぅ?ん…。確かに肥は肛門から出るもんじゃのう。かっかっかっ♪』
英幸は目の前で高笑いをする老人に無性に腹が立ったが…
【じ、じじぃっ!!アンタ何者なんだよっ?】
『ワシかぁ?ふんっ、聞いて驚くなよ。恐れ多くもワシは、お前さんの御先祖様なるぞ~っ!!
えぇ~いっ頭が高ぁい、控えおろぅ~!』
どこかで聞いたセリフである。
【はっ、はぁっ!?ご、御先祖様だってぇ…?】
と、思わぬ言葉に唖然としてしまう英幸だったが…
『かぁっかっかっ♪恐れ入ったかっ!』
とまあ、そんなわけで…
夢の中に突如として現れた下品な老人の正体は、何と英幸の御先祖様。
彼にとってこの出会いこそが、今後の運命を左右する事になるのである。
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