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零香はいつも通りに、家の鍵を開けて、広い玄関を見渡すと、リビングに電気がついている事に気がついた。
『あれ?兄貴帰ってきてる。珍しいな』
ドアノブをぎゅっと握りしめて、ドアを開けた。
そこには、ソファーに寝込んでいる青年、兄神谷大我だった。
零香の方へと振り返り、疲れた表情で零香の顔をまっすぐに見つめた。
『おかえり…零香!今日は遅いんだな』
『ただいま!兄貴今日仕事は?』
零香の問い掛けに、大我はかすかに戸惑いを見せたが、清々しい表情を浮かべ、答えた。
『今日は…仕事が休みなんだ。』
大我の言葉に疑いはなかったが、零香はあの事を思い出すと、頭がモヤモヤし始めた。零香は、思いっきりあの事を口にだした。
『聞いてなかったんだけど兄貴って、何処の仕事で働いているの?』
大我の目つきは、一瞬に変わり、零香の問いに、考えをめぐらせるように沈黙した。
『なぜ…お前がそんな事を聞く?』
ようやく口を開いた大我に、零香は、静かではあるが、語気を感じさせる声で返す。
『だって…何も言ってくれないじゃん!ウチは、ずっと前から、兄貴が何処で働いているか気になっていたの。』
『お前に言うのは、まだ早い。零香は、まだ若すぎる。』
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