プロローグ②・赤いマリオ

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「ホームルームの時間は過ぎているが気にするな!君はゆっくり正々堂々正面突破すればよい!」 教室のドアの前にたちながら、黒いスーツを着た僕がこれから入るクラスの担任教師、兵法が言った。 正面突破は何か違うと思うのですが。 と、言う台詞を飲み込み、僕は、はい、とだけ答えた。 満足そうに兵法は頷くと、教室の中へと入っていく。 僕も後に続いて教室に入っていく。 「あぁー、遅れてすまんな諸君!では、ホームルームを始めようではないか!」 偉そうな声。 この人はいつでもこんな感じなのだろうか。 教室の中、ほとんどの生徒がまじめに話を聞いているが、 一人だけ机に突っ伏して、顔だけ上げて話を聞いている茶髪の生徒がいる。 「…ほら、自己紹介をしろ!」 兵法に万年筆で指される。 はい、と小さく返事をした。 「…赤井鞠雄です」 特に、言うべき事もないし早く終わらせよう。 「…よろしくお願いします」 「んー、赤井!君はとりあえず緑川の後ろの席に座ってくれ!」 兵法が机に突っ伏している生徒を指しながら言った。 僕は頷き、緑川、の後ろに歩いていく。 「…よろしく」 挨拶をする。 「ああ、よろしく」 返される。 これが、僕と緑川の、ごく当たり前な、初めての会話だった。 これから緑川と一番話すようになるとは、この時は全く思っていなかった。
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