プロローグ②・赤いマリオ

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プロローグ②・赤いマリオ

俺、緑川涙治(ミドリカワルイジ)は机に突っ伏していた。 友達がいないわけではない。 ホームルームの時間になっても担任教師、現国の兵法(ヘイホウ)が教室に来ないから、やることもないし寝たふりをしているのだ。 「ね、ね、緑川君、兵法先生どうしたのかな?」 隣の席の桃山未姫(モモヤマミキ)が声をかけてくる。 「知らねーっ。興味もねぇーっ」 「もー…ナルシストの暴走族みたいだよ緑川君」 なんだその例え。 ガラッ。 「あぁー、遅れてすまんな諸君!さて、ホームルームを始めようではないか!」 偉そうに言いながら黒のスーツに身を包んだ妙齢の女性、担任の兵法が教室に入ってくる。 続いて…学ランの男子生徒が兵法について教室に入ってくる。 うちの高校の制服はブレザーだから…転校生、か? 「さて、今日から君たちのクラスに新しい仲間が増えることになった!仲良くしてやるよーにっ!ほら、自己紹介をしろ!」 兵法が胸ポケットにさしてあった万年筆を引き抜き、それで学ランの生徒を指しながらそう言った。 「赤井鞠雄(アカイマリオ)、です。よろしくお願いします」 特におもしろくもないごくごく普通の自己紹介だ。 …名前がマリオ、っていう点を除けば。 「ルイージって名前の人に言われたくないんじゃない?マリオ君も」 「人の心を読むな。って言うかそういう感じで呼ばれると某ラノベと被るから止めろ」 こいつは放っておくと何を言い出すか分からない。 「んー、赤井!君はとりあえず、緑川の後ろの席に座っておいてくれ!」 必要性がなかったから言わなかったが、俺の後ろの席は空いている。 赤井は兵法の言葉に頷き、俺の後ろの席に歩いてきて座った。 「よろしく」 「ああ、よろしく。」 これが、おもしろくも何ともない俺と赤井の初めての会話だった。
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