波紋

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そのままなんだ… 無造作に置かれた あらゆる本の山。 積み重ねられ、うっすらと埃をかぶっている本棚。 もう 何年も この部屋に入ってない事を物語っている。 (あの人の匂い) 萌子は 薄汚れた窓に手を掛けた。 冷たい風が 吹き込んで来る。 (まだ ちょっと寒い) 萌子は白い息を 両手にかけながら 窓の側に佇む。 2月に入り 幾分 昼間は暖かくなったが あいにく今日の天気は曇り。 日差しも入らず、部屋の中は じっとしてられない寒さだった。 (早く片付けて 帰ろう) 萌子は 寒さに震えながら 埃をかぶる本の山を見上げた。 (確か…この辺に) 一つ、一つ 本の表紙を指でなぞりながら 萌子は目的の本を探す。 そう 幼き頃に父が読んで聞かせてくれた 物語の話しの本。 内容もタイトルすらも はっきりと思い出せない。 父との思い出は ほとんどない。 萌子が物心つく頃には父は仕事から帰った後も 休みの日にも父は大抵 この部屋に閉じ籠っていた。
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