六花の章。

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「柳探題使。調査資料をお持ちしました。・・・毎度のことながら期限ギリギリになりまして申し訳ありません。」 そう言いながら調査報告書を差し出す。 柳探題使はチラリと有聡をみやり、調査報告書を受け取った。 「まぁ、いつもギリギリではありますが、ちゃんと間に合ってはいますしね・・・。もう少し字が綺麗だと私としては助かるのですが。」 「すみません。」 「あなたもミミズの形状観察の徹夜続きでお疲れでしょう。今日・・・といってももう深夜ですが、早く屋敷に帰って寝たらどうです?」 常に冷静なこの口振りから怒っていると勘違いされやすい柳探題使だか、人の真偽をよく見抜く優秀な探題使として名を馳せている。 現に有聡の上司が担当するような重要な事件の裁決を下すことも多い。 「はい。そうさせて頂きます。では失礼致します。」そう言って辞そうとした有聡に声が聞こえた。 「新人にしては・・・まぁ今年1年よくあの鬼畜上司の下で頑張りましたね。」柳探題使は凄まじい勢いで調査報告書を読み進めていて、有聡の方を見もしなかったのだが。 初めて聞く自分へのいい評価に思わず立ち止まって、柳探題使をみやった有聡は、喜色満面で答えた。 「・・・っありがとうございます!」
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