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二歳違いの兄が異母兄弟だと言う事は、いつ頃からか知ってはいた。
しかし、雅晴が言うように二人は本当の兄弟以上に公平に育てられ―― まさか雅晴がこんな事を考えていようとは、信彦は思ってもいなかったのだ。
「でも、だからって母さんのために二条院の名を捨てるなんて……。母さんは喜ばないよ! 母さんは兄さんが大好きなんだから!」
「勘違いするなよ。家を出るのはそのためじゃない。自分として生きるため、夢を現実にするためだよ」
ムキになった信彦に、雅晴は宥めるように言葉を掛けた。
「やっぱり映画監督になるつもりなんだね。でも、父さんはきっとそんな事認めてくれない」
「そうだな。きっと凄い剣幕で怒るだろうな。間違いなく勘当だ」
確かにワンマンな晴信が、自分の計画に沿わない事を許すはずが無い。
雅晴はフッと笑った。
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