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「スミマセン、シツレイシマス」
聞こえたのは、日本語だ。
途端にホッとして向き直る。
「はい、何でしょう?」
思わず笑顔になる。
「アナタ、ニジョインサン……デスカ?」
「はい、二条院ですけど――?」
今度は不思議そうな顔をした信彦に、金髪のその人は続けた。
「ワタシ、コレ、アズカリマシタ。ヒコウキノナカデ、トナリニイタニジョインサンニ」
「えっ?」
差し出されたのは一通の封筒。
こんな物を残して、本人が居ないという事は――
どうやら、嫌な予感は的中したようだ。
「タシカニ、ワタシマシタヨ」
「あ、すみません。ありがとうございました。ハ……ハブ、ア、ナイスデイ」
取り合えず覚えている英語で挨拶してにこやかに手を振ると、ポケットからハンカチを取り出して信彦は汗を拭いた。
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