Challenge 1 ― 逃げ出した花嫁 ―

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 この辺りのホテルの支配人は、ほとんどが父と顔見知りだ。  従ってホテルに行ったりしたらたちまち家に連絡が行って、迎えに来られるのは間違い無い。 「どうしよう……」 「どうしたの?」  呟いた途端、後ろで声がして、杏樹は慌てて振り向いた。  目に飛び込んだのは、どう見てもあまりいい人そうではない三人の男。 「カッワイイ!」 「な、俺の言った通りだろう?」  仲間同士で顔を見合わせ一言二言言葉を交わすと、最初に声を掛けてきた男は、また杏樹の方へ視線を移した。 「君、可愛いね。一人? だったら、俺たちと遊ばない?」 「いいえ、今家に帰るところですから――」 「へえ……家出して行く所無いんじゃないの? さっき電話で話してたじゃん」  どうやら、杏樹が電話を掛けているのを聞いていたのだろう。  男たちは、無視して立ち去ろうとした杏樹を取り囲んだ。
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