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「泊まる所無いならさ、すぐそこのラブホテルにでも行けばいいじゃん。俺たち一緒に行ってやるから。な?」
杏樹の横に立っていた二人の男は互いに目配せすると、いきなり杏樹の腕を掴んだ。
もちろん、そのまま一緒に行くわけが無い。
「離してください。大声出しますよ!」
「なら、出してみな。誰も助けてくれないぜ」
男の言葉に、すかさず杏樹が声を上げる。
「誰か、助けてください! 助けて!」
けれど何人もの人が歩いているにも関わらず、誰一人として立ち止まってくれる人はいなかった。
男たちが怖いのか、関わり合いたく無いのか、それともこんな所に一人で居たのだから自業自得だと思われているのか、とにかくみんなチラリと見るだけでそそくさと行ってしまうのだ。
「誰か……」
「な、言った通りだろ? じゃあ行こうか」
口角を上げたリーダー格の男の声に、杏樹を両脇から挟み込むようにしていた男たちが歩き出す。
行きたくも無い方向へ強引に引かれ、杏樹は首を横に振った。
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