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「嫌、離して! ヤダ!」
しかし必死で抵抗しても身長155センチそこそこの杏樹では、いくら暴れても男たちにはちっとも応えない。
それどころか足をジタバタすると、今度は抱え上げられてしまった。
「ヤダ! やめて、離してぇ!」
「『離してぇ』だってよ。可愛いねえ」
そのまま、ホテル街の入り口まで連れて来られた時だった。
突然ふらりと近付いてきた一人の男性が、先頭を行くリーダー格の男の肩を叩いた。
「ちょっとお訊ねしますけど――」
「何だぁ? おまえ」
「お願い助けて!」
チャンスとばかりに、杏樹がポロポロと涙をこぼしながら助けを求める。
二十歳ぐらいのその男性は、杏樹をチラリと見て少し微笑んだ。
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