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「大丈夫? 怪我はない?」
その声に杏樹が顔を上げると、男性は歩み寄っていた足を止めた。
「君は――」
杏樹は急いで立ち上がり、泣きながらその男性にしがみついた。
「うっ……えっ……えぇ……」
「もう怖くないから、泣かなくていいよ」
男性がフッと微笑む。
杏樹はその人の胸に顔を押し付けたまま、肩を震わせていた。
知らない男に連れて行かれそうになった怖さもあった。
でもこんなに沢山人がいるのに、この男性以外誰も助けてくれなかった事が杏樹にはショックだったのだ。
物心ついた頃から今までずっと、周りは味方になってくれる人ばかりだったのに……
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