Challenge 1 ― 逃げ出した花嫁 ―

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「帰れないって……どうして?」 「どうしても! でも……他に行く所もない」  そんな事を言ってもどうしようも無い事くらい、杏樹にも分かっていた。  助けてくれたこの男性を、困らせてしまうだけだという事も。  でも、両親に「結婚は嫌だ」と言っても聞いてもらえない事も、それと同じくらい分かっていた。  遠くから聞こえるクラクションの音を掻き消し、男性が話しかけてくる。 「ね、もし良かったら、理由を聞かせてくれないかな? 二人で考えれば、一人で考えるよりはいい解決案が出て来るかも知れないだろ?」  耳に届いた穏やかな声に顔を上げると、杏樹は頷いた。
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