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公園のベンチに杏樹を座らせて、男性が自動販売機で買ったジュースを渡す。
杏樹はジュースを一口飲むと、ゆっくり話し始めた。
「私、家出して来たんです。それで……友達の所に泊めて貰おうと思って。でもみんな家から連絡が行ってて……。ホテルもきっとそう。一人で行ったら、すぐ私だってばれちゃって家に連れ戻される。そうしたら私、まだ高校生なのに、やりたい事いっぱいあるのに、なのに……パパやママが決めた人と結婚させられる……」
杏樹は急に悲しくなって、涙が溢れて来た。
そうなのだ。
自分はまだ十七歳なのに、これからやりたい事がいっぱいあるのに、何故知らない男の所へ嫁に行かなくてはならないのだろう?
ファーストキスもまだなのに、胸がときめく恋愛もしていないのに、何故なんだろう?
そう思うと、結婚を勝手に決められた悔しさにも増して、多分それに反抗しきれないであろう自分が悲しかった。
「そう……。それで家出して来たんだ。要するに、君はその人と結婚したくないんだね?」
男性の問い掛けに、杏樹が頷く。
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