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「何故嫌なの?」
「その人とは小さい頃一度会っただけだし、それに、結婚って自分で決めてするものでしょう?」
「そうだね。でも一度会っただけで、その後手紙や電話もないの?」
覗き込む男性の黒い瞳へ、杏樹は首を横に振った。
「手紙はずっと来てました。特にここ二年ぐらいは頻繁に。でも読んだ事ないんです」
「読んだ事ないって―― 一度も?」
「ええ」
「そう……」
顎に手を当てて少し考える。
それから、男性は口を開いた。
「君は、その婚約者とは結婚したくないと両親に伝えたの?」
「言いました。だけど――」
「聞き入れて貰えなかった?」
杏樹が頷くと、男性はまた少し考えてから口を開いた。
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