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風間健人(かざまけんと)と名乗ったその男性は、二年振りにニューヨークから帰国したばかりで、駅前のカンタベリーホテルに部屋を取っていた。
杏樹は部屋を一つ貸してくれると言う健人の申し出を受けて、ホテルについて行く事にした。
しかし、このホテルは家族で何度も食事に訪れた事があって、当然支配人は顔見知りだ。
もしここで見つかったら、決心して家出をした意味がない。
杏樹は覚悟を決めた。
当たって砕けろだ!
いや、砕けるわけには行かないが当たるしかなかった。
健人に借りたニューヨークヤンキーズのキャップを目深に被り、フロントの前に立つ。
運良く、支配人はロビーにはいなかった。
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