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「でも、楽しかったよあの卒業式。あれのおかげで、去年も今年も生徒主体の式をやろうって事になってさ。僕らの時に手伝った在校生も、自分たちも絶対にやるって言ってた。今では学校側も認めてくれて、若い先生の中には協力してくれる先生も出て来て――」
風を切り、車はどんどん坂を登っていく。
真っ直ぐ前を向いた雅晴の横顔を見ながら、信彦は続けた。
「出来上がったものの中でそれに流されて行くのは簡単で楽ちんだけど、それじゃあきっと何も残らないよね。古い物の良い所も認めながら、時代にあった新しい物をどんどん創造して取り入れて行く――。そしてそれを、自信を持って実行する。そうして行かなくちゃいけないんだ。兄さんのおかげでそれが分かった」
「そう言って貰えて嬉しいよ」
「だけど兄さん――」
信彦が真剣な顔で雅晴を見る。
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