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「今日のは結婚式だよ。卒業式のような事をするわけには――」
「見ていれば分かるさ。最高の結婚式になるよ」
雅晴は髪を掻き上げながら、言葉を続ける。
「それから信彦、二条院の家はおまえが継いでくれ。僕は二条院の名を捨てる」
「えっ?」
信彦は驚いて、思わずシートから身体を起こした。
「兄さん、何言ってるんだよ。家を継ぐのは長男だって、二条院家では決まって――」
「おまえが継いだ方が、天国の母さんも喜ぶ。―― 知っているだろう? 僕が母さんの子じゃ無い事」
「それは……」
信彦は言葉を失った。
「だからおまえの方がいいんだ」
「だけど――」
「母さんには感謝している。自分とは血の繋がらない僕を、おまえと分け隔て無く可愛がってくれた。本当に優しい人だった」
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