Challenge 11 ― さよならジュリエット ―

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 美しい緑に囲まれた礼拝堂。  そのドアの前に、杏樹は父の一樹と二人で立っていた。 「杏樹。幸せになるんだよ」 「パパ……」  心なしか、一樹はいつもより元気がないように見える。  爽やかな初夏の風に白いベールが揺れる。  一樹は穏やかに微笑み、静かに口を開いた。 「普通は、こんな事を言ってはいけないのかも知れないが――」  少し躊躇いながら言葉を続ける。 「辛かったら、いつでも帰っておいで。お嫁に行っても、杏樹はパパとママのたった一人の可愛い娘なのだから」 「パパ……今日までありがとう」 「いつまでもおまえを愛しているよ」  一樹は杏樹をじっと見つめ、それから視線を逸らせた。 「―― こんなに早くお嫁にやるんじゃなかったよ」  中からパイプオルガンの厳かな調べが聞こえて来た。  式が始まる。 「さあ行くよ、杏樹」
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