Challenge 11 ― さよならジュリエット ―

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 目の前のドアが開き、父に手を引かれ一歩ずつ雅晴の待つ祭壇の前に進んで行く。  真紅の絨毯の上、足を踏み出すたびに次々と思い出が浮かんでは消えた。  幼い頃の事、友人と過ごした日々。  そして―― 健人との事。  父から雅晴へと杏樹の手が移る。  健人――  杏樹は健人が何処かで自分を見ているような気がして、心の中で小さく健人の名を呼んだ。 「シンロウ、ニジョウインマサハルハ、ミヤサカアンジュヲツマトシテ――」  神父の良く通る澄んだ声が、シンと静まった礼拝堂の中に響き渡る。 「ヤメルトキモ、スコヤカナルトキモ――」  ステンドグラスを通して、明るい日差しが床の上に美しい模様を投げている。 「アイシツヅケルコトヲ、チカイマスカ?」 「誓います」  雅晴の声がした。  パイプオルガンの曲は、何処かで聞いた事があるものだ。
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