Challenge 1 ― 逃げ出した花嫁 ―

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「でもどうしよう……このままじゃ、夕方には二条院家の思い通りにされちゃうわ。そして結婚――。ああ嫌だ! 何とかしなくちゃ」  しばらく動物園の熊のように左右への移動を繰り返した後、杏樹は覚悟を決めて頷いた。  クローゼットに入り、スポーツバッグに少しの着替えを詰め、学校のキャンプで一度身に着けただけのジーンズに着替えてテラスに出る。  それから持って来た避難用の縄梯子を手摺りの柱に縛り付け、スルスルと庭に下ろしてそれにしがみついた。  梯子を降り、急いで裏口の木戸に向かう。  その時、突然上の方で大きな声がした。 「杏樹!」  振り向くと、杏樹の部屋のテラスに喜代子の姿があった。  何か用を思い出して、再び杏樹の部屋を訪れたのだろう。  驚いて目を見張った杏樹が、声を上げる。
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