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「ママ!」
「あなた何をしているの !?」
手摺から身を乗り出して問い掛けた喜代子に、杏樹は首を横に振った。
「ママごめんなさい。でも私は、人に決められた道を歩いて行くのなんて嫌なの。自分の進む道は自分で決めるわ」
「自分でって何処へ行くの !? 杏樹!」
「奥様、どうかなさいましたか?」
喜代子の声を聞き付けて、勝手口の方から運転手の川口が飛び出して来た。
このままでは、川口に邪魔されてしまう。
そう判断した杏樹は、急いで裏口を抜けて駅の方へ向かって走り出した。
「川口さん! お願い、杏樹を止めて!」
その声に弾かれるように、川口がすぐに杏樹の後を追う。
しかし、旧家の立ち並ぶ複雑な路地に阻まれて、杏樹の姿はあっという間に分からなくなってしまった。
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