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「兄さんの乗った便が着くまで、後何分?」
二条院雅晴の弟、信彦は成田空港への道を急いでいた。
混雑する事を計算に入れてたっぷり時間を取って来たのに、今日の渋滞は特別酷くて何だか間に合いそうになかった。
「後、二十分です」
「困ったなあ……完全に遅刻だ。でもしょうが無いもんな」
信彦は諦める事にした。
ここでいくらジタバタしたって、早く着くわけでも無いのだから。
一つの事に夢中になる雅晴とは違い、信彦は元来諦めのいい方なのだ。
「それにしても兄さん、ちゃんと帰って来るかなあ……」
小さく呟き、溜息を吐く。
それと言うのには、理由があった。
先日『帰国する』と連絡があった時、婚約者である宮坂杏樹との顔合わせをしようと言い出した父と、それを渋る雅晴との間で大喧嘩になってしまったからだ。
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