Challenge 1 ― 逃げ出した花嫁 ―

7/27
286人が本棚に入れています
本棚に追加
/262ページ
「兄さんの乗った便が着くまで、後何分?」  二条院雅晴の弟、信彦は成田空港への道を急いでいた。  混雑する事を計算に入れてたっぷり時間を取って来たのに、今日の渋滞は特別酷くて何だか間に合いそうになかった。 「後、二十分です」 「困ったなあ……完全に遅刻だ。でもしょうが無いもんな」  信彦は諦める事にした。  ここでいくらジタバタしたって、早く着くわけでも無いのだから。  一つの事に夢中になる雅晴とは違い、信彦は元来諦めのいい方なのだ。 「それにしても兄さん、ちゃんと帰って来るかなあ……」  小さく呟き、溜息を吐く。  それと言うのには、理由があった。  先日『帰国する』と連絡があった時、婚約者である宮坂杏樹との顔合わせをしようと言い出した父と、それを渋る雅晴との間で大喧嘩になってしまったからだ。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!