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雅晴は古い二条院家のしきたりを疎んじていて、長男が跡を継ぐと決められている事と、特に親同士が決める事となっている結婚には大反対だった。
「何か嫌な予感がする」
やっと渋滞から抜け出した二条院家の車は、信彦の不安を乗せて成田へ近付いて行った。
空港へ着いたのは、それから五十分後。
雅晴の乗った便の到着予定時刻から、既に三十分も経っていた。
「兄さんいるかな……」
急いで到着ロビーへ向かい、キョロキョロと辺りを見回す。
と、椅子に腰掛けていた外国人と目が合った。
「まずい……僕、英語まったく駄目なんだ」
急いで目を逸らした信彦の視界の隅、その人が立ち上がりゆっくり近付いて来るのが映る。
口元を引き攣らせた信彦は、背後に気配を感じて胸を押さえた。
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