此処、墓より

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「ここで私は 何を見るのかしら」 目を逢わすことのできない あなたのこれからには まだ少し未練を持つ 白い壁の中に在る 齢60ほどの記憶 吸収されて縛られて 私は今 ここに在る 歴史の途絶えた`あの'日から あなたはそれから 日が降りても 灰の空であっても 知らないままに会いに来てくれる 「ヨシノ」 ほら隣りには君が だから平気だと言葉にしたい 彼すら赦したと言葉にしたい もう私は、何も怨んでいない 「僕はずっとそばにいるよ」 私達が染まる日にち 齢15だろう娘 熱く見つめて微笑んで 私達の未だ忘れぬ嫉妬 けれど何故か笑うことができる 君のも私のも大きな愛になったね 彼女はそれから 日が降りても 灰の空であっても 何も知らずあなたに焦がれる 「 」 知られざる過去 知られざる秘密 知られざる愛情 かなわない婚礼 私達には不可能だった 終われぬ恋を終わらせた 互いの恋に打ち込んだ恋 許されない蓋の仕方 だから私達はここに在る 彼女は知ろうとするだろうか 既に消え去った喜劇(悲劇)を 彼女は知ればどうするだろう その柔らかな瞳は 閉じられてしまうのか 「ヨシノ」 私達の墓に眠るたったひとつの≪  ≫  
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