記憶の欠片

13/24
215人が本棚に入れています
本棚に追加
/548ページ
「アイシャ、あなたは人間です。 あなたなら人間達を止められる」 優しい黄金の瞳が、アイシャをしかと見据えた。 吸い込まれそうな美しい瞳に誰が抗えようか、アイシャは無意識のうちに頷いていた。 アイシャが何もしないまま、数日が過ぎた。 イシュタルには簡単に約束してしまったが、大人達の行動をまだ幼いアイシャが止められるわけがない。 ましてやその頂点にいる神官長なんて、そう簡単に会える人物ではなかった。 やらなければならないと思いつつ、人間の友人達との遊びや家族との団らんに時間は費やされ、その後ろめたさからアイシャはよく溜め息をつくようになる。 それを心配した両親が、アイシャに何を悩んでいるのかと尋ねた。 (助かった!) その時アイシャはそう思ったに違いない。 約束を果たせないという思いから、大好きなドラゴン達にも会えなかったのだから。 苦しかったアイシャは全てを話だした。 父が爽やかな笑顔で、アイシャの頭にポンと手を置き、何とかすると約束してくれた。
/548ページ

最初のコメントを投稿しよう!