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翌日のお昼過ぎ、アイシャは父から呼び出され、父と共に丘のふもとにある神官長の大きな石造りの建物を目指して歩いていた。
神官長がアイシャから直接話を聞きたいと言ったそうだ。
父の手を握って歩くアイシャの足取りは軽やかで、もうすぐ重荷がおろせるのだと確信していた。
――何故、あの時信じてしまったのだろう。
あの神官長の微笑みを。
「君は真に神に愛された神子だ」
そして神官長は、アイシャにだけだと言って、幼い少女を連れて丘を登った。
そこで見たものに、アイシャは感嘆の溜め息をもらした。
丘の上に立つ白い四本の柱、中央から天に向かって伸びる白い螺旋階段。
今まで自然の中に美しさを見出だしてきたアイシャだったが、人間が作るより洗練された文明に心を奪われた。
神官長は屈んでアイシャと目の位置を合わせ、優しく微笑む。
「わかったかい、アイシャ。
これが決して良くないものではないということが」
確かに、イタクが言うようにロクでもないものではない。
とても壮大で、神々しい。
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