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旧幕府軍と新政府軍の最後の戦場となった五稜郭に
一人の婦人と女の子が足を運んだ。
「母様ぁ、さくらきれいだねー」
そうだね、と相槌を打ちながら一つの桜に吸い寄せられた。
八分咲きの他の桜に比べ満開にしているこの桜。
命を惜しまず咲き続ける姿を、あの人と重ねずにはいられない。
「歳三、見つけた。」
そう、私の最愛の人。
―――土方歳三。
桜の木の下に花束と手向けの酒を置く。
酒持って来たけど、歳って下戸だっけ。まぁいっか、花見酒好きだったもんね。
歳との生活を思い出したら、キリがないよ。
喧嘩だって沢山したし、説教だってされた。
赤い顔して、好きだって言ってくれた。
新選組の隊内が変わって忙しい時も寝る間を惜しんで会いに来てくれた。
でも蝦夷へ向かう時は待ってろって言ったね。
『この戦争が終わったら…祝言上げてやるよ。』
その言葉を信じて彼を送り出した。
その数ヶ月後、身体に異変を感じた私は医者に掛かったら
まさかの懐妊。
宝物が増えて大事に大事に育てて、一人でこの子を産んだ。
あなたの驚く顔を想像して。
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