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あの後は正直覚えてない…空返事をして葉月さんは仕事の時間になったから僕は屯所に戻った。
あの人が求めてる物は僕には到底手に入れれない。
どんどん暗くなっていく気持ちの中、一つの自分の欠点に気付いた。
僕は真面目に思いを告げていない。
何度も告白した気がしていたけど、いつも冗談めかし、本気で好きだと言ったのは昔のあの時だけだ。
ちゃんと告おう。
最後の告白だと思う。
明日の朝言いに行こう、そう決め込んだ僕は冷たい布団に潜り込んだ。
朝の眩しい陽射しがぼくの眉間を刺激した。
「葉月さん、おはよう。」
「あら、総ちゃん。今日は早いのね!」
布団を干しながら身体を捻って僕の方を見る。
「今日は言いたい事があるんだ。」
手に汗握るとはこのことなのか、などやけに他人事な考えをしながら彼女の隣に立った。
「なーに?どうかしたの?」
「僕は…葉月さんが好きだよ。」
京に来てから初めての真顔で告白。
今の僕には冗談なんて一欠けらもない。
あの短い言葉に全てをかけた。
「私も総ちゃんが好きよ。」
僕にとっては最高の返答。しかし、美しく残酷な顔だった…。
解ってしまった。あの夢での痛みが…
彼女は同じ顔をあの時からしていた、この好きの顔。
僕と彼女の【好き】は違った。
僕は最後まで弟だったんだ。
「これからもよろしくね…葉月さ…ちゃん。」
(君と僕の恋情は一向に平行線で…)
(年の差と同じ…)
(決して交わらない)
END
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