序曲

2/46
前へ
/241ページ
次へ
 自分にとっては当たり前の日常で、やり取りだとしても、他の人から見れば普通ではない時がある。ということを知ったのは遅かった。  鈍いとか馬鹿とか、そんな発言さえもらうくらい彼女にとってそれが当たり前のことだった。  何か選択する時には両親の許可がいる。将来役に立つか、立たないかの判断で決められていく。  ――あなたはきちんと勉強していい大学に行って、将来は医者になってね。医者じゃなくてもいい仕事に就くのよ。  ――絵描きも色塗りもする必要はないわ。漫画もアニメも見てはいけないの。なんの役に立つの?  好きなものを見つける前に取り上げられる。楽しんで過ごしていた無邪気な時間はすぐに終わってしまう。  例えば、習い事は自分が興味を持ったからではなく、親の趣味といえるもの。もしくは望んでいるものである。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加