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(それはまるで、あの人のもので、)
『何考えてんだよ』
『…いや、』
頬をぺちぺち叩かれ、ぼんやりした思考から覚醒。
天井を背景にして不機嫌な顔をしている男を見る。
触れる肌はひたすら熱い。
重ねた手はひたすら優しい。
見つめる瞳はひたすら鋭い。
―――ああ、
『お前が好きだと思っていたんだ』
え、という短い声が聞こえたすぐ後、みるみるうちに真っ赤に染まっていった。
こういう関係になるまで知らなかった。
不動は意外に照れやさんらしい。
『…鬼道ちゃん』
愛おしむような声色で俺の名前を呼ぶ。
くらくら、眩暈がした。
目を閉じて柔らかくて甘いそれを享受。
肌の上を伝う指の先から労りを感じる。
『俺も、すっげぇ好き』
ああ、嗚呼、ああ。
ふわりと笑むその瞳、
嗚呼、嗚呼。
闇を孕む彼の瞳は、あの男によく似ている。
それが酷く愛おしく感じる俺はなんて最低なやつなんだろうか。
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