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高校を卒業した私は、親の反対を押し切って、ひとり上京したのだ。 私には、夢があった。 ……女優になる!! あの輝く世界のためなら、私はこの一生を賭けることができる。 家族も恋人も、何も望まない。 私は町でも評判の美人の娘として、生まれたのだ。 中学でも高校でも、演劇部で一生懸命活動してきた。 厳しい世界だということくらい、知っている。 何をなくしても構わない。 私は、女優になるんだ。 女優こそ私の天職だ。 そう思っていたから、頑なに反対する両親のことが 急に邪魔でたまらなくなった。 「もういいっ!勝手にしなさいっ!!」 いつも優しかった母が、血相変えて私に怒鳴った。 「あぁ、勝手にするわよ! こんな家、二度と戻らない!!」 売り言葉に、買い言葉。 親子の縁を切るかのような勢いで、私は家を飛び出した。 上京してからは、養成スクールのオーディションを受けて 大手のプロダクションに所属した。 ……ほらね、言ったでしょ。 私が失敗なんかするわけないじゃない。 そう思ったのに……。
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