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必死にアルバイトをしながら、練習に通った。 いろんなドラマやら、映画やらのオーディションも受け続けた。 簡単には受からない。 わかっていたから、簡単には諦めない。 食らいついてやる。 ……そんな時だった。彼に出会ったのは。 彼を、なんと形容したらいいのだろう。 最初は、ただ無愛想な男だとしか思わなかった。 やっと手にした端役、これをチャンスに這い上がるんだ。 それなのに、このいけ好かない、横柄で生意気そうな男と組まされる。 「お前、真面目にやれよ!!」 ……ある日突然、彼に一喝された。 震えるような怒りを滲ませた声に、全身が緊張する。 その日はちょうど、出がけに母からの電話があったのだった。 父がくも膜下出血で倒れ、急死したと――――。
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