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再び故郷の地を踏んだとき、私が家を飛び出してから 実に、20年もの月日が過ぎていた。 父の葬式にさえ行けず 社会の底辺を這い回った私をこの地に導いたのは、母からの手紙だった。 「あなたのことを思わなかった日は、ありません。 お母さんは毎日、あなたの無事を祈っています。 この命が終わる瞬間まで、お母さんはあなたを心配することをやめないでしょう」 いつもお手本のように美しかった母の文字は、ところどころ歪んでいた。 直感した。 ……母は、病気なのだ。 それも軽いものではない。 私は心の中でずっと、父の死に目に会えなかった自分を責め続けていた。 だからこそ、今さら実家に帰ることも出来なかった。 だけど。 今帰らなければ、きっと私は更なる後悔をすることになる……。 実家に帰るために、飛行機の切符を買った。 2回、無駄にした。 どうしても勇気が出ない。 搭乗ゲートが、果てしなく遠いよ、お母さん……。 空港から戻るモノレールの中で、私はふと窓の外の景色に目を留めた。 ……満開の桜が咲いていた。 花弁は風に舞い、儚く散ってゆく。 幼い頃、家族3人で撮った写真を思い出して、私は静かに涙した。
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