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「時折泣き叫ぶ他はおとなしく、変わりありません」
「そうか」
『それ』は短く言葉を返すと、深い椅子にゆっくりともたれた。
「ここへ連れてまいりましょうか」
「うむ」
彼が肯定の意を示すと、執事は部屋を出て行った。
後ろで束ねた彼の髪は、緑がかった銀色をしている。
ジャケットの袖口から僅かに覗いた手も
生身の人間とは思えぬような、薄い緑色を帯びていた。
「……疲れた……」
ひとりになると、彼は胸の内から振り絞るような声を出した。
「……俺はもう……疲れた……」
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