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緑の手で瞳を覆って、闇に包まれた部屋で『それ』は動かなくなった。
そうしてどれくらい経っただろうか。
一瞬とも、永遠とも取れる時間の経過ののち、再び扉が開いた。
「さぁ、早く入れっ」
乱暴な執事の言葉と共に、ひとりの美しい娘が部屋の中に投げ出された。
『それ』はゆっくりと椅子から起きあがると、彼女の傍に寄った。
娘は恐怖と嫌悪の表情を浮かべながらも、彼との距離を測ろうとして
瞳を彼に向けてはすぐに顔を背けるという動作を繰り返していた。
「そんなに俺が怖いか」
彼の問いに、娘は答えない。
ただ、空気が彼女の恐怖で揺れていた。
「捕らわれた身の上だ。
もう観念しているのだろうな」
追い打ちをかけるかのように冷たく、執事が言葉を被せる。
「村の者達の噂は真実だ……。
俺たちは、人間の、それも若い女の血肉だけを糧として、生きながらえている」
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