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娘を抱き起こすと、視線が合った。
「……すまなかった」
短い言葉には、『それ』の謝罪の心が詰まっていた。
「……いいのよ。
ここへ来た時から、命は諦めていたわ」
娘が答えた。
その瞳は弱々しくも、凛として揺らがない己を内に秘めているかのように、彼には思えた。
「……付いて、きなさい」
彼が差し出したその手を、勇敢にも、娘は握った。
どくん。
彼は自分の鼓動が、
止まっていた自らの鼓動が
再び動き出すのを、確かに感じた。
どくん。
歩く度に、速さを増す……。
脈打つのは、彼の身体だろうか。
それとも、魂だろうか。
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