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彼が足を止めたのは、迷宮のように入り組んだこの城の、外界と内側を繋ぐ扉だった。
大きくて威圧的。
悲しいほどに厚い扉は、外界のもの全てから心を閉ざしているかのように思われた。
「行け」
怪物は、呻くように言った。
「帰るのだ」
彼が手を振り上げると、厚くて重たげな扉は
音もなく静かに開いた。
「……でも」
娘は彼を見つめた。
「あなたも……一緒に行かない?
まだ月が明るいわ」
『それ』は娘を睨み付けて、背を向けた。
「二度は言わぬぞ。
行くんだ」
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