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大樹は唾に混ざった血を吐き捨てると、憎しみを込めた目で牢獄の扉を睨んだ。
「あいつら……無茶苦茶しやがって。」
傷だらけだとか、もうそんな事を気にするのは止めた。
どれ程時間が経ったのかも分からない。
たまに厳造もやってきて大樹に虐待を加えたりもする。
厳造の目の色が黒い内は使用人たちも何も出来ない。
再び牢獄の扉が開き、またかと大樹は思ったが、入ってきたのは大樹と同じぐらいの年の女の子。
「姫花…か。」
入ってきたのは「姫花ーヒメカ」という女の子で、心配そうに大樹に駆け寄った。
「大丈夫…じゃないよね。」
既に涙目の姫花は優しく大樹の頭を撫でる。
「ごめんな…姫花。心配かけちゃって。」
「ううん、気にしないで。」
「ありがと…」
今出来る精一杯の笑顔を見せると、姫花は泣きながらも笑った。
「大樹の笑った顔、久し振りに見た。」
「笑うのか泣くのかどっちかにしてくれ…。」
困ったように焦る大樹も自分が笑ったのは久し振りにだと思った。
姫花は涙を拭くと、決意したように真剣に大樹を見た。
「私が誰にも負けないくらい強くなって大樹を助ける。だから……その時は二人で世界を変えよう?」
「俺には力が無いから無理だ。でも……そんなのも悪くないかもな。
いつか俺が姫花を全てから守ってやるよ。」
「約束だよ?」
「ああ…。」
大樹と姫花は約束を交わした。
互いを護る約束。
絶対に破りはしないと、大樹は深く誓った。
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