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大樹は霧弥の待つ書斎へと赴き、扉の前で口を開いた。
「……大樹です」
「入れ。」
大樹はゆっくりと書斎の扉を開け、足を踏み入れた。
大樹の目に入ったのは霧弥の背中で、顔は見えない。
その背中を射抜くように睨み、やがてまた口を開く。
「俺を呼び出したのは……用件はなんですか?」
大樹はすでに心は黒。
スラスラと言葉を繋いだ。
「樹里、下がってよいぞ。」
「御意に…」
樹里は書斎の扉を閉め、大樹と霧弥の二人だけとなった。
「大樹……お前をようやく捨てる日がやって来た。焔の恥を捨てると思うと俺も気が楽だ。」
「そうでしょうね…。今すぐ俺を殺すなら、痛く殺してくださいよ。生まれ変わった時に忘れないように。」
「……いいだろう。」
大樹の足元が光を帯び、魔方陣が展開した。
「いつか貴方を殺しに帰ってくる。それまで、精々胡座をかいて嘲笑っているがいい。焔は俺が潰すんだ。絶対に忘れるなよ!!」
「ああ…。そんな日が来るなら楽しみにしているよ。」
魔方陣が一層光を放つと、元からそこにいなかったように、大樹の姿は消えた。
「当主様……」
気づけば樹里が背後に立っていて、震えた背中を擦った。
「大樹……せめて俺と同じ血が流れているのなら、自分の言った事ぐらい守れよ。」
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