目覚めと出逢い

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何はともあれ、大樹も名乗る事にした。 「俺は大樹。焔という家に生まれた子供で、死ぬはずだった子供だよ。」 「死ぬはずとは?」 首を傾げるナツは、不思議そうに聞いた。 「俺には魔力が無くて……親にも兄弟にも、周りにも呆れられて、ここに来る前にお父様に殺されるはずだったんだよ。」 「でも大樹を殺したのではなく転移させた。殺したくなかったんですね。」 「どうなんだろうな。だが、お陰でまだ父親との約束は果たせそうだ。」 大樹には分からない。 最後に見たのは父親の背中だったのだから。 「でも、大樹には魔力が無いわけではないですよ?」 「えっ!?」 大樹は目を見開いて驚き、ナツの言葉を聞く。 諦めていたというのもあるが、大樹は魔力があるのなら、力が手に入るならと期待した。 力があれば、父親も厳造も茉莉も咲も華恋も、焔の一族は皆殺しに出来るのだから。 「魔力が封印してあるのを治療してるときに見つけましたので、意識が戻ってから封印を解こうと思っていたんです。」 「ほ…本当に魔力が…俺にある……」 「ええ、今解きますね。先程記憶を覗かせていただきました。私たちは協力はしなくても切っ掛けは与える事はできるので、逢ったのも必然。自分の信じた道を生きてください。」 ナツは大樹のお腹に手を添えると、手が光を帯びて輝いた。 次の瞬間、大樹は抑えきれない程の力を感じた。
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