目覚めと出逢い

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見た目は唯の洞窟。 牢獄にも見えるが、パッと見た感じは洞窟である。 だが、大樹は何故かそれを洞窟ではなく牢獄だと、すぐに分かった。 否、それは…… 「どうしたんですか大樹?」 大樹はナツの言葉に答える事は無く、牢獄に向かって歩き出した。 「大樹、その場所は……」 実はその牢獄は天使たちでも上位の力を持つ天使にしか認識出来ない。 故に、ナツは驚いていた。 大樹には既に畏怖を感じる程の潜在能力を引き出していたのだから。 「ダメです!!この先は立ち入り禁止なのですから。」 「どけナツ。俺はこの先に用があるみたいなんだ。 呼ばれている気がする。」 大樹はナツの忠告を聞かずに牢獄に入り、底の見えない螺旋階段を降り始めた。 ―――――――――――― 「んっ……誰かが……来る。」 鉄格子の中に、少年がいた。 その少年は幾十の鎖に繋がれ、動かせるのは精々指と首ぐらいだ。 光すら知らない少年は、生まれた時からここにいた。 鎖は少年が成長すれば大きくなる仕組みのようで、誰かと合った事も、話した事も無い。 だが、気がつけば言葉は知っていた。 理由も何故か少年は知っていた。 誰かと話してみたいと、そう思って願っていた。 そしてその願いは、前触れを無く突然やってきた。
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