目覚めと出逢い

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ただ嬉しくて、少年は泣いた。 「僕が…一緒にいていいの?」 「ああ…。」 大樹に迷う様子は無い。 ナツはただこの成り行きを見守って、いないようなものだ。 実質的に大樹と少年。 二人の出逢い。 「僕が一緒にいると不幸になるよ?」 「この出逢いは不幸じゃない。」 「君に迷惑がかかる。」 「すべて振り払う。」 「でも…でも……」 少年は言葉を詰まらせた。 堕天使は墜ちた天使。 祝福や幸せではなく、不幸をもたらす存在。 少年が迷うのも無理は無いが、迷いの無い瞳が少年を見据えて離さない。 「お前が墜ちたなら、俺が引っ張り上げてやる。 きっと俺はお前を迎えに来たんだよ。」 「本当に……いいの?」 「一緒に来い…。」 大樹はもう一度手を差しのべ、少年は大樹の手を取った。 「待たせて……悪かったな。」 「僕は…きっと君を待ってたんだよ。」 少年は生まれて初めての笑みを大樹に見せ、大樹も嬉しそうに笑った。 「俺は大樹。これからは俺と友達なんだ。名前を教えてほしい。」 少年は大樹の言葉に表情を変え、困った表情を浮かべた。 「僕…名前が無いんだ。大樹に……貰いたいな。」 照れ臭そうな仕草に恥ずかしさが伺えるが、照れているのだろう。 「そうだな…………「光輝ーコウキ」という名前はどうだ?光輝く堕天使という意味を込めて。」 「光輝…か。うん、僕は今日から光輝。大樹の友達だ。」 笑う事を覚えた堕天使、始まりの軌跡であった。
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