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霧弥は勢い良く赤ん坊の声がする部屋の扉を開け、慌ただしく部屋に入った。
生まれた子供を見ようと、霧弥は妻に寄った。
「生まれたのか、茉莉?」
霧弥の妻、茉莉は霧弥に微笑むと、生まれた赤ん坊を霧弥に見せた。
「頑張ったな、茉莉。」
今の泣きながら生まれた赤ん坊に微笑む霧弥には、焔の当主としての威厳など欠片も無かった。
「抱いてあげてみてください…」
茉莉は赤ん坊を霧弥に渡そうとしたが、霧弥は触れる寸前で伸ばした手を下げた。
「ダメだ…俺が触ると壊してしまいそうだ…。」
悔しがる霧弥を見て、クスッと茉莉は微笑み、それを呆れたように見る厳造。
「咲の時と同じ事を言っておる……少しは成長するべきじゃぞ?」
それは微笑ましくも幸せな焔の軌跡であった。
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