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華恋は迷う様子も無く一直線に大樹へと向かってくる。
もう、気づいているのだろう。
昔は大好きだった兄なのだから。
華恋は大樹の前に立ち、スラリと動いた右手で大樹を指差した。
「あなた…間宮という名前は嘘なんじゃないですか?」
会話とは、挨拶から始まるものだというのに。
「かの有名な焔のお嬢様が転校生に何の御用ですか?俺は間違いなく間宮という名前ですが。」
まったくの他人を装えば、何とかなるだろう。
そう思っていたが、現実はそうもいかない。
「どうした…華恋」
ようやく黙っていた俊が口を開き、不思議そうな表情を浮かべた。
「俊…あなたは黙ってて。」
俊を殺気を放つ程に睨み、俊はそのあまりの恐さに黙り込んだ。
「大樹、もう行こうよ。」
光輝は大樹の肩に手を置き、この場を離れるように要求した。
大樹をこの妹の前に置いておくのは危険だと思う。
では離れるしかない。
「ああ、行くか。」
大樹は踵を返し、光輝と俊と共に歩き出したが、後ろから声が聞こえた。
「待って!!あなたは私の……お兄ちゃんなんでしょう!?」
華恋の一言は大樹に届き、その歩く足を止めた。
ほんの少し振り返り、口を開く。
「それは……今は死んだゴミの事じゃないのか?」
冷徹な瞳が、華恋を覗いた。
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