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その言葉に、華恋は押し黙った。
兄は死んだと父から伝えられ、三日三晩泣いたがもう吹っ切れた。
自分は兄が好きだったが、落ちこぼれだという理由で罵った。
今大樹に言われた一言ですべて思い出し、今自分は目の前の人間を兄と呼んでいいのか、分からなくなった。
「その兄なら、お前ら焔の人間が殺したんじゃないのか?落ちこぼれだと、ゴミだと罵って。」
「くっ…!!」
言い返せない。
言い返せるはずもない。
「兄は凄く優しかったろ?焔が兄を監禁するまではな。それから焔は手のひらを返すように態度を変えた。姉も妹すらもだ。優しかったのはメイドぐらいだった。
……違うか?」
「何も……違わない。」
自分でも知らない内に華恋の瞳から大粒の涙が溢れていた。
それは言い返せない悔しさからか、言われて気づいた罪悪感からか。
「その殺された兄がお前の前に現れたら、お前はどうするつもりだったんだ?
自分を殺した一家を恨まずにいられる程殺された兄も仏では無いと思うがな。」
「わから……ない。」
「フンッ。話しにならんな。行くぞ。」
大樹は再び歩き出し、光輝と俊と共に華恋の元を去った。
残されたのは大粒の涙を流す華恋だけだった。
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